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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1551号 判決 1949年2月15日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人福田覺太郎の上告趣意について。

しかし、原審公判調書を精査するに、「組合の會計係の資格において組合の事務を行う爲と組合員以外の村民のため、本件監の買入れの世話をする目的で金を持って出かけた」旨の被告人の供述がある(記録第一六七丁)。即ち判示金員の性質に關しては被告人の當公廷における判示同旨の供述がある。この被告人の自白とこれを補強するため原判決が引用した町田徳之助に對する檢事の聽取書中の同人の供述と、伊藤清子に對する司法警察官の聽取書中の同人の供述とを綜合すれば、被告人は判示組合の業務執行のため及びこれに併せて組合員外の村民の委任事務處理のため一括して保管している判示金員を擅に消費した事実を認定するに十分である。そして本件の如く業務上保管した金員と個人的な委任に基いて保管した金員とを混同して保管して、それを連續横領したときは連續犯たる業務上横領の一罪を構成し、別に通常の横領罪が成立するものではないから、原判決が本件犯行を業務上の横領罪に問擬したのは正當であって、原判決には所論のような擬律錯誤等の違法はないから論旨は理由がない。

よって、刑事訴訟法施行法第二條、舊刑事訴訟法第四四六條に從い主文のとおり判決する。

右は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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